介護施設の業務改善ガイド|記録業務を効率化して人材定着率を高める方法

介護施設の業務改善で多い失敗は、「効率化=ケアの質を下げること」と現場が受け取ってしまうことです。記録を速くする、申し送りを短くする、と聞くと、入居者と向き合う時間まで削られるのではという不安が職員の間に広がり、改善の提案が止まります。

しかし実態は逆で、記録業務や申し送り、シフト管理といった間接業務を効率化すれば、結果として入居者と向き合う時間や職員同士の学びの時間が増えるというのが、私が介護施設の業務改善支援現場で見てきたパターンです。

厚生労働省の推計では、2022年度の介護職員数約215万人に対して、2026年度には約240万人(+約25万人)、2040年度には約272万人(+約57万人)の確保が必要とされており、「人が増えれば何とかなる」という前提は崩れています。これからは、今いる職員の一人あたり生産性と定着率を同時に引き上げることでしか、施設運営は持続できません。

出典:第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について|厚生労働省(令和6年7月12日公表)

この記事では、中小企業診断士として介護施設の業務改善支援に携わってきた立場から、介護施設特有の業務課題・記録業務を効率化する具体策・人材定着率を高める改善手法・活用できる主な補助金までを一貫して解説します。

💡 関連記事:【業種別】製造業・建設業・介護の業務改善完全ガイド|支援実績から解説


目次

介護施設の業務改善が急務な理由

まず、なぜ今、介護施設で業務改善が待ったなしの状況なのかを整理します。

理由1:2040年度までに+57万人の介護職員確保が必要

厚生労働省の推計では、2022年度の介護職員数約215万人に対して、2026年度には+25万人、2040年度には+57万人の確保が必要とされています。少子高齢化に伴う需要増加と、生産年齢人口の減少が同時進行しているためです。

出典:第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について|厚生労働省(令和6年7月12日公表)

この状況は、採用強化では解決できません。仮に採用ができても、業務が属人的で教育に時間がかかる施設では、せっかく採用した新人が定着せず退職してしまうケースが頻発しています。採用コストを積み上げるより、今いる職員が働き続けられる業務設計を作る方が、中長期の施設運営を安定させます。

理由2:令和6年度介護報酬改定でICT活用が人員配置要件に組み込まれた

令和6年度の介護報酬改定では、介護ロボット・ICT機器を活用する施設に対する人員配置基準の緩和が導入されました。見守り機器や記録のデジタル化などを一定水準で運用している施設は、従来より少ない配置人数で基準を満たせる制度設計になっています。

具体的には、介護老人保健施設・短期入所療養介護において、夜間の人員配置基準が2人以上→1.6人以上に緩和される新区分が創設されました(全ての利用者への見守りセンサー導入、夜勤職員全員のインカム等ICT使用、安全体制の確保等が要件)。

また、特定施設(有料老人ホーム等)では人員配置基準が3:1→3:0.9に特例的柔軟化され、認知症対応型共同生活介護では夜間支援体制加算に0.9人以上加配の新要件が設けられました。あわせて、生産性向上推進体制加算(Ⅰ100単位・Ⅱ10単位)が新設され、見守り機器等の継続活用を評価する制度が整備されました。

出典:令和6年度介護報酬改定について|厚生労働省令和6年度介護報酬改定における改定事項について(PDF・p112-117)|厚生労働省老健局(社会保障審議会 介護給付費分科会 第239回 参考資料1)

つまり、ICT機器や介護ロボットを導入した施設は、人員配置基準の緩和や新たな加算を活用できるため人件費を抑えながら、生産性向上推進体制加算により収入はむしろ上乗せできるのに対し、導入が遅れた施設は従来どおりの人員配置を続けざるを得ません。この差がそのまま人件費と収益性の差として経営を直撃する時代に入ったということです。

理由3:定着率向上には「運営のあり方」「人間関係」「処遇」への包括的な対処が必要

介護労働安定センターの令和6年度調査では、介護職員が前職を辞めた主な理由の上位に「職場の人間関係に問題があったため(34.3%)」「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため(26.3%)」「他に良い仕事・職場があったため(19.9%)」「収入が少なかったため(16.6%)」が並んでいます。

出典:令和6年度「介護労働実態調査」結果|介護労働安定センター(令和7年7月28日公表)

この結果は、定着率向上には「組織運営」と「処遇」の両面からの取り組みが必要であることを示しています。業務改善は離職理由の直接的な上位要因ではありませんが、記録業務の効率化で生まれる時間と経営余力を、職員との対話や処遇改善に再投資できるかどうかが、施設の定着率を左右するとも考えられます。


介護施設に特有の業務課題5つ

介護施設で発生しやすい業務課題を、現場支援の経験から5つに整理します。

課題1:記録業務の多さと非効率

介護記録、バイタル記録、食事量記録、排泄記録、申し送りノート、ヒヤリハット報告、家族への連絡記録──介護現場では、1日のなかで多種多様な記録項目が発生します。手書きの紙記録やExcel運用が残っている施設では、同じ情報を複数の帳票に転記する二重入力が多発しているケースを見てきました。

課題2:申し送りの長時間化と情報のばらつき

シフト交代時の申し送りは、30分〜1時間を費やしているケースが多く見られます。口頭中心の申し送りは、話す人・聞く人によって伝わる情報の粒度がばらつき、「夜勤帯に聞いていなかった」「別のユニットに伝わっていなかった」という情報ロスを生みます。

課題3:新人教育の属人化

「先輩の動きを見て覚える」という教育スタイルが残っている施設では、誰に教わるかで習得内容が変わる状態が発生します。新人は「何をどこまでできれば一人前か」が見えず、教える側も「自分の流儀」で教えるため、ケアの標準化が進みません。

課題4:シフト管理と欠員対応の煩雑さ

24時間体制の介護施設では、シフト管理が管理者の大きな負担になっています。職員の希望・有給・急な欠勤対応を紙のシフト表やExcelで管理している施設では、シフト作成に月8〜12時間を費やしているケースもありました。

課題5:多職種連携の情報伝達ロス

介護職・看護職・機能訓練指導員・ケアマネジャー・相談員といった多職種が関わる介護施設では、入居者情報の一元管理ができていないことが多く、同じ質問を職員ごとに繰り返し家族に聞いてしまう、記録が職種ごとに分断される、といった情報伝達ロスが発生します。


記録業務を効率化する具体策5つ

介護施設の業務改善で最も効果が出やすいのが、記録業務のデジタル化と構造化です。具体策を5つ紹介します。

具体策1:介護記録ソフト・タブレット入力の導入

記録ソフトやタブレットの導入は、最優先で取り組むべき改善のひとつです。手書きの紙記録をタブレット入力に切り替えるだけで、記録時間が大幅に短縮されます。

  • チェックボックス・定型文の活用:食事量・排泄・バイタルなどの定型項目は、選択式入力で所要時間を削減
  • 音声入力の併用:自由記述が必要な場面では、音声入力でタイピングを省略
  • リアルタイム入力:ケアの直後にその場で入力することで、後回しによる記憶の劣化と書き漏らしを防止

職員1人あたり1日30分〜1時間の記録時間の短縮が実現できれば、月間換算で1人あたり10〜20時間、10人規模のユニットなら月100〜200時間の余力が生まれる計算になります。

具体策2:バイタル測定機器・センサーとの自動連携

体温計・血圧計・見守りセンサー・ベッドセンサーなどを介護記録システムと自動連携させることで、測定値の手入力を自動化できます。職員は「記録を取る」作業から解放され、入居者の様子を観察する本来業務に時間を使えます。

  • 見守り機器×記録システム:就寝中の離床・体動をセンサーが検知し、記録に自動反映
  • バイタル機器×記録システム:体温・血圧を測定したデータがBluetooth経由で記録に自動転送

具体策3:申し送りの構造化とテンプレート化

申し送りを短縮する最も有効な方法は、「誰が・何を・どの順番で・何分以内で話すか」を下表のような共有フォーマットに定義することです。項目ごとに所要時間の目安まで決めておくことで、話題の脱線や情報の重複が減り、申し送り時間が確実に短縮されます。

項目所要時間目安
引継ぎ事項(ケア変更・医療対応)5分
新規入居・退居情報3分
ヒヤリハット・事故報告3分
家族連絡・面会予定2分
連絡事項・質疑応答2分

具体策4:申し送りボード・共有掲示板のデジタル化

物理的な申し送りノートや連絡ボードを共有ツール(Teams・LINE WORKS・施設専用SaaS)に切り替え、ユニット横断で情報を閲覧できるようにするのも非常に有効です。

  • 夜勤者が昼間の出来事を確認できる
  • 別ユニットの職員が他ユニットの状況を把握できる
  • 事務所にいなくても、タブレット・スマホから情報にアクセスできる

具体策5:二重入力の撲滅

手書きノート→Excel転記→介護記録システム入力、といった二重・三重入力は徹底的に撲滅すべきです。こうした重複を見つけ出す最も有効な手段が、業務の棚卸しです。業務を一度すべて洗い出し、「情報の発生→経由帳票→最終保存先」の流れを一覧化します。これを行うと、誰も読んでいない中間帳票や、システムから直接出力できる集計表が次々に浮かび上がります。具体的な進め方は下の関連記事で解説しています。

💡 関連記事:業務の棚卸し完全ガイド|中小企業が最初にやるべき可視化の進め方


人材定着率を高める改善策

記録業務の効率化で生まれた時間を、人材定着のための施策に再投資することが、業務改善の目的です。

改善策1:マニュアル整備による新人教育の標準化

「先輩の動きを見て覚える」教育スタイルから脱却するには、ケアの手順・業務フローをマニュアル化することが出発点です。

  • 写真・動画マニュアルの活用:移乗介助・食事介助・入浴介助など、実技が多い介護業務は文字だけでは伝わりにくい。動画マニュアルは特に効果的
  • 「初日・1週間・1か月・3か月」のステップ設計:習得すべきスキルを時系列で整理し、新人が「今どこにいるか」を可視化
  • チェックリスト形式の習熟度管理:「何をどこまでできれば合格か」を明示することで、教える側と受ける側の認識を揃える

💡 関連記事:業務マニュアルの作り方完全ガイド

改善策2:業務改善で生まれた時間を「対話」に再投資する

記録時間が減って生まれた時間を、「入居者との対話」「職員同士の振り返り」「教育・研修」に振り向けることが、定着率向上の鍵です。

  • 入居者との会話時間の確保:職員の専門職としての満足度が向上
  • 週次の振り返りミーティング:ケアの質を議論する場が、職員の学びと成長実感につながる
  • OJT時間の確保:先輩が新人と向き合う時間が増え、教育の質が上がる

改善策3:評価基準の明確化とキャリアパスの提示

「何ができれば昇給・昇進するか」が不透明な施設は、若手職員の離職リスクが高い傾向があります。

  • スキルマップの作成:介護技術・知識・リーダーシップを項目化し、現在地と次のステップを見える化
  • 資格取得支援:介護福祉士・ケアマネジャー資格の取得支援制度を整備
  • 等級制度と連動した昇給ルール:「3年続けても給料が変わらない」状態を解消

改善策4:シフトの希望反映率を上げる

職員の有給取得・希望休の反映率は、定着率に直結します。シフト管理システムを導入することで、以下を実現できます。

  • 職員からの希望シフトをアプリで受付
  • AI・アルゴリズムによるシフト自動作成
  • 急な欠勤時の代替要員探しを自動化

改善策5:業務改善プロジェクトに職員を巻き込む

トップダウンで「改善しろ」と指示するだけでは、現場は動きません。現場職員が改善提案を出せる仕組みを作り、採用された提案には評価と報奨を与える文化を育てることが、中長期的に最も効果的な定着策です。

  • 月次の改善提案会:小さな気づきを共有できる場
  • 採用された提案の実施と共有:「提案が実現した」という成功体験
  • 提案者の表彰:貢献が認められる安心感

活用できる主な補助金

介護施設の業務改善投資には、複数の国・自治体の補助制度が活用できます。ここでは代表的な補助金を整理します。

介護テクノロジー導入支援事業(地域医療介護総合確保基金)

介護施設にとって最優先で検討すべき補助金です。介護ロボット・ICT機器の導入費用を、要件を満たせば補助率3/4を下限として支援する仕組みです。

項目内容
所管厚生労働省・都道府県(地域医療介護総合確保基金を活用)
対象介護施設・事業所全般(入所・通所・居住系・在宅系)
対象分野9分野16項目(移乗支援・移動支援・排泄支援・入浴支援・見守り・コミュニケーション・介護業務支援、および2024年改訂で追加された機能訓練支援・食事・栄養管理支援・認知症生活支援・認知症ケア支援
補助上限額介護ロボット:移乗支援(装着型・非装着型)・入浴支援は1台あたり100万円/その他分野は1台あたり30万円ICT・介護業務支援100〜250万円(職員数連動:1〜10人=100万円、11〜20人=150万円、21〜30人=200万円、31人以上=250万円。変動しない契約は一律250万円)/パッケージ型導入400〜1,000万円
補助率要件を満たす場合は3/4を下限、それ以外は1/2を下限
申請窓口実施主体は都道府県。公募・交付決定は都道府県ごとに行われる

出典:介護テクノロジーの利用促進|厚生労働省令和8年度概算要求の概要(老健局)p38|厚生労働省「ロボット技術の介護利用における重点分野」を改訂しました|厚生労働省(2024年6月改訂・2025年4月運用開始)

公募スケジュール・対象機器・詳細要件は都道府県ごとに異なるため、施設所在地の都道府県公式サイトで最新情報を確認してください。

IT導入補助金

介護記録システム・シフト管理ソフト・会計ソフトなどのクラウドサービス導入には、IT導入補助金も活用できます。補助枠ごとに補助率・上限額が異なるため、詳細は関連記事で確認してください。

💡 関連記事:IT導入補助金で業務効率化ツールを導入する方法【2026年最新】

業務改善助成金

事業場内最低賃金を引き上げる計画とセットで、設備投資を助成する厚生労働省所管の制度です。介護業界は賃上げが定着率に直結する業種のため、賃上げと設備投資を同時に行う計画が立てやすい補助金です。コース区分・助成上限額・助成率などの詳細は関連記事で確認してください。

💡 関連記事:厚生労働省 業務改善助成金とは?申請条件・金額・スケジュール

補助金活用の組み合わせ例

介護ロボット・見守りセンサーは介護テクノロジー導入支援事業、介護記録ソフトはIT導入補助金、現場職員の賃上げに伴う設備投資は業務改善助成金、というように補助金を組み合わせて使うことで、施設全体のデジタル投資を大幅に加速できます。

💡 関連記事:補助金×業務改善完全ガイド|ものづくり・IT・省力化投資補助金の活用法


介護施設の業務改善を進める5ステップ

介護施設で業務改善を実際に進める際の、現場で役立つ5つのステップを紹介します。

ステップ1:業務の棚卸しで「時間ドロボー」を可視化

施設全体でどんな業務があり、それぞれにどれくらい時間をかけているかを洗い出します。「記録業務が多い」という感覚的な認識を、「1日あたり何時間・月何十時間を記録に使っているか」という定量データに置き換えることで、改善の優先順位が明確になります。

ステップ2:改善テーマを3つに絞る

すべての課題を同時に改善しようとすると、現場が疲弊します。「記録業務のデジタル化」「申し送りの短縮」「新人教育マニュアル」のように、影響範囲が大きく、かつ短期間で効果が出る3テーマに絞り込むのが現実的です。

ステップ3:現場職員を巻き込んで進め方を決める

トップダウンで「これを使え」と指示しても現場は動きません。現場職員をプロジェクトメンバーに入れ、「どのツールが自分たちに合うか」「どの運用ルールなら無理なく続けられるか」を現場主導で決めることが定着のカギです。

ステップ4:小さな成功体験を積み重ねる

まず1ユニットで試験導入し、効果を測定し、現場の声を反映して改善してから全施設展開する、という段階導入が失敗を防ぎます。いきなり全施設で切り替えると、トラブルの影響範囲が大きくなり改善プロジェクト自体が頓挫するリスクがあります。

ステップ5:改善内容をマニュアル化して定着させる

改善した業務手順は、必ずマニュアル・動画・チェックリストに落とし込みます。マニュアル化していないと、担当者が替わったときに元のやり方に戻ってしまい、改善が「一過性の取り組み」で終わります。


支援事例:介護施設事業者の売上・稼働分析を「3時間→10分」に効率化

全国数十カ所で介護施設を展開する事業者(従業員約1,100名)から、「毎月末の売上・稼働分析を担っていた社員が退職してしまい、後任者ではExcelの中身がもう読み解けない」というご相談をいただいた事例です。

ご提案したのは、新しいシステムを買うことではなく、まず業務の棚卸しから始めることでした。現状のExcelフォーマットと関数を一つひとつ追いかけ、「なぜこの処理がここにあるのか」を現場と一緒に言葉にしていく地道な作業です。そのうえで、バラバラになっていた関数を整理し、基幹システムからのデータ取り込みをVBAマクロに置き換え、操作手順をマニュアルに落とし込みました。

結果、毎月末に2〜3時間かかっていた集計・分析は約10分・3ステップに短縮され、誰が担当しても同じ結果が出せる状態に。高価なシステムを入れなくても、使い慣れたExcelと丁寧な棚卸しだけで、属人化は十分に解ける──そう実感いただいた事例です。

💡 事例詳細:【3時間を10分に短縮】介護施設事業者における売上と稼働実績の分析業務の効率化


よくある質問(FAQ)

Q. ICT化に反対する職員が多いのですが、どう進めればよいですか?

反対の理由は大きく2つあります。「使いこなせる自信がない」「機械に頼ると介護の温かみが失われる」という不安です。前者は段階的な研修と、年齢層別のペア制(若手が年配職員をサポートする体制)で解消できます。後者は、「記録時間を減らして入居者との時間を増やすためのICT」というメッセージを繰り返し伝え、実際にそうなった現場事例を共有することで納得感が生まれます。

Q. 介護記録システムはどれを選べばよいですか?

選定基準は、①タブレット・スマホでの入力のしやすさ、②バイタル測定機器・見守りセンサーとの連携可否、③多職種(看護・ケアマネ・相談員)でも同じシステムで情報共有できるか、④介護保険請求ソフトとの連携、の4点です。導入前に必ず現場職員による試用期間を設け、現場の声を反映した選定を行ってください。

Q. 業務改善と人員配置基準緩和はどう関係しますか?

令和6年度介護報酬改定で、ICT・介護ロボットを一定水準で活用する施設には、人員配置基準の緩和が導入されました。ICT・介護ロボットの活用による人員配置の効率化を、加算や配置基準緩和というかたちで制度的に評価する方向に動いているため、業務改善の遅れは直接的な運営コスト差になります。

出典:令和6年度介護報酬改定について|厚生労働省令和6年度介護報酬改定における改定事項について(PDF)|厚生労働省老健局

Q. 夜勤帯の業務改善はどうすればよいですか?

夜勤帯の業務改善で最も効果が出やすいのは、見守りセンサー・離床センサーの導入です。巡視回数を適正化でき、職員の身体的負担を軽減しながら、入居者の転倒・離床を早期に検知できます。介護テクノロジー導入支援事業の補助対象機器にも含まれているため、補助金活用で導入ハードルを下げられます。

Q. 小規模な介護事業所でも業務改善は必要ですか?

はい、むしろ小規模事業所ほど業務改善の効果が相対的に大きくなります。管理者が1人で何役もこなしている小規模事業所では、1つの業務を効率化しただけで、その管理者が本来業務(利用者との面談・家族対応・事業戦略)に使える時間が大幅に増えます。小規模事業所は補助金の優遇枠も多いため、IT導入補助金・業務改善助成金・介護テクノロジー導入支援事業の活用を積極的に検討してください。


まとめ:介護施設の業務改善は「時間を作って人に投資する」活動

本記事では、介護施設の業務改善について、業界特有の課題・記録業務の効率化・人材定着率を高める改善策・活用できる補助金までを解説しました。最後に要点を整理します。

介護施設の業務改善の本質は、記録業務や申し送りといった間接業務を効率化することで、入居者と向き合う時間・職員同士の学びの時間・新人教育の時間を確保することにあります。効率化はケアの質を下げる活動ではなく、ケアの質を上げるための時間投資です。

押さえておくべきポイント

  1. 2026年度に+25万人、2040年度に+57万人の介護職員の追加確保が必要と見込まれ、業務改善による生産性向上は制度的にも運営的にも必須
  2. 記録業務の効率化が最も効果が出やすい改善テーマ。介護記録ソフト・タブレット入力・音声入力・バイタル機器自動連携の組み合わせで、記録時間を半減以上にできる
  3. 業務改善で生まれた時間を、対話・教育・キャリア支援に再投資することで、人材定着率が向上する
  4. 介護テクノロジー導入支援事業(最大3/4補助)・IT導入補助金・業務改善助成金を組み合わせて活用することで、施設の自己負担を大幅に抑えられる
  5. 現場職員を巻き込んだ段階導入が、改善の定着を決める

まずやることは、1〜2週間かけて施設内で業務の棚卸しを行い、「職員1人あたり1日何分を記録業務に使っているか」を定量化することです。そのデータをもとに、介護テクノロジー導入支援事業やIT導入補助金の公募スケジュールを都道府県公式サイトで確認し、補助金申請の準備を公募開始前に整えておくことが、着実にツール導入を進めるためのおすすめパターンです。

介護施設の業務改善について、もっと具体的なアドバイスが欲しい方は、60分の簡易業務診断(無料相談)をお気軽にご利用ください。(毎週1社限定)


投稿者プロフィール

小西 貴大
小西 貴大ベイズマネジメント代表
中小企業診断士・事業承継士・属人化解消コンサルタント|マニュアル制作会社に13年勤め、300種類以上の業務マニュアルの制作、ドキュメント管理システムの開発に従事。現在は中小企業の業務効率化・属人化解消を支援するコンサルタントとして独立。マニュアル整備による教育の自動化やIT導入による生産性向上で、年間640時間の残業削減を実現した支援実績を持つ。