業務の棚卸しテンプレート(Excel無料DL)|記入例・使い方・項目解説付き

業務改善のため業務の棚卸し(洗い出し)をやろうと決めたのに、「どんな形式でまとめればいいかわからない」と手が止まってしまっていませんか?
実は、テンプレートの選び方と使い方を間違えると、棚卸しを完成させても業務改善に一切つながりません。私がコンサルタントとして中小企業を支援するなかで最も多く見てきた失敗が、「とりあえずExcelに業務名を書き並べて終わり」というパターンです。
本記事では、業務の棚卸しに必要なExcelテンプレートを無料配布するとともに、項目の意味・記入例・使い方まで一貫して解説します。棚卸しをやりきり、実際の改善アクションにつなげるための完全ガイドとしてご活用ください。
目次
業務の棚卸しテンプレートとは?その役割と使う目的
「何を」「誰が」「どれだけ」を一覧にするためのツール
業務の棚卸しテンプレートとは、社内で行われている業務を「業務名・担当者・頻度・時間・課題」の軸で一覧化するためのフォーマットです。
Excelのシートを開いて業務をリストアップするだけでも「棚卸し」はできます。しかし、項目が揃っていないと後で集計・分析ができず、「一覧は完成したが、どこから改善すればいいか分からない」という状態に陥ります。
私が中小企業向けの業務改善支援を行っている経験から確信しているのは、テンプレートの質が棚卸しの精度と改善の速度を決定的に左右するということです。業務の棚卸しは「埋めれば完成」ではなく、「後で使えるデータを作る」ことが目的だと理解することが最初の一歩です。
テンプレートなしで棚卸しを始めてはいけない理由
テンプレートを用意せずに棚卸しを始めると、担当者ごとに書き方がバラバラになります。ある人は業務名を「受注処理」と書き、別の人は「注文書チェック」と書く。これでは後から分類・集計ができません。
テンプレートには、記入ルールを統一することで、誰が書いても同じ粒度でデータが集まるという機能があります。特に10名以上の組織で棚卸しを実施するなら、テンプレートの事前準備は必須です。
💡 関連記事:業務の棚卸しとは?意味・目的・基本をわかりやすく解説
【無料DL】業務棚卸しExcelテンプレートの3種類と選び方
弊社ベイズマネジメントでは、中小企業の支援現場で実際に使ってきた業務棚卸しテンプレートをご用意しています。目的や規模に応じて3種類から選べます。
| タイプ | 向いている場面 | 入力項目数 | 自動計算 | こんな会社に |
|---|---|---|---|---|
| ①シンプル版 | 初めて棚卸しをする・5〜15名規模 | 5項目 | なし | まず業務の全量を把握したい |
| ②業務量計算版 | 工数・人件費を可視化したい | 10項目 | 3列(月間・年間工数) | 人件費コストの根拠を数値で示したい |
| ③課題分析版 | 改善優先度まで決めたい | 21項目 | 5列(工数+優先度) | 棚卸しから改善計画まで一気に進めたい |
📥 ダウンロード:業務棚卸しExcelテンプレート
タイプ①:シンプル版(基本5項目)

初めて棚卸しを行う会社、または15名以下の小規模チームに向いているフォーマットです。入力項目は「大分類(業務カテゴリ)・業務名・担当者名・頻度・メモ(課題・引継ぎポイント)」の5項目のみで、難しい設定や数値入力は一切不要です。
① シンプル版のメリット
- 1人あたり30分以内で記入できるため、業務が止まらない
- 説明不要で全員が直感的に記入できる
- 「業務の全量を見える化する」という棚卸しの第一目的に集中できる
- まずやりきることを優先したい場合や、②③への移行前のウォーミングアップとしても最適
まず棚卸しを一度やりきることを優先するなら、シンプル版から始めましょう。
タイプ②:業務量計算版(工数・年間時間を自動集計)

「1回あたりの所要時間(分)×月間実施回数×担当者数」から月間総工数・年間総工数が自動計算されるフォーマットです。どの業務に最も多くの時間が使われているかが数値で一目で分かり、改善インパクトの試算にも直結します。
入力項目は大分類・中分類・小分類(業務名)・主担当者名・副担当者名・頻度・1回あたりの所要時間・月間実施回数・担当者数・備考の10項目で、月間合計時間・月間総工数・年間総工数の3列が自動計算されます。
② 業務量計算版のメリット
- 工数が大きい業務を数値で特定できるため、「感覚」ではなく「データ」で改善優先度を決められる
- 主担当・副担当を分けて記録することで、業務の偏りや属人化が一目でわかる
- 年間工数を時給換算すれば人件費コストとして経営層への説明資料にそのまま使える
タイプ③:課題分析版(改善優先度・ECRSフラグ付き)
業務の棚卸しから改善計画まで一気通貫で進めたい場合に使うフォーマットです。②業務量計算版の工数情報に加え、「代替可否(○△×)」「属人化度・改善余地・緊急度(各1〜5点)」「優先度スコア・ランク(自動判定)」「ECRSフラグ(排除・結合・置換・簡素化)」「改善アクション候補」などの列を備えた全21項目の総合版です。
③ 課題分析版のメリット
- 属人化度・改善余地・緊急度の3軸スコアが自動集計され、優先度ランク(A/B/C)が自動判定される
- ECRSフラグで各業務の「排除できないか・まとめられないか・別の手段に置き換えられないか・もっとシンプルにできないか」を整理でき、改善の方向性まで棚卸しと同時に検討できる
- 集計ダッシュボードで部門別・優先度別の工数を自動集計。会議資料にそのまま使えるレベルで出力される
棚卸し後にすぐ改善アクションに入りたい会社、またはリーダー・管理職が改善の主体となって進める場合に最適です。
📥 ダウンロード:業務棚卸しExcelテンプレート
💡 関連記事:ECRSとは?業務改善フレームワークの実践方法
テンプレートの項目解説|各列の役割と使い方
3種類のテンプレートは、含まれる項目の数と種類が異なります。このセクションでは、各列が何のためにあるかを「全バージョン共通」「②業務量計算版・③課題分析版から追加」「③課題分析版のみ」の3グループに分けて解説します。
| 項目 | ①シンプル | ②業務量計算 | ③課題分析 |
|---|---|---|---|
| 業務名(分類) | ✓ | ✓ | ✓ |
| 担当者名 | ✓ | ✓ | ✓ |
| 頻度 | ✓ | ✓ | ✓ |
| メモ・課題 | ✓(自由記入) | ✓(備考) | ✓(課題・改善案) |
| 所要時間・月間回数 | — | ✓ | ✓ |
| 工数(月間・年間) | — | ✓(自動計算) | ✓(自動計算) |
| 代替可否(○△×) | — | — | ✓ |
| 属人化度・改善余地・緊急度スコア | — | — | ✓ |
| 改善優先度ランク(A/B/C) | — | — | ✓(自動判定) |
| ECRSフラグ | — | — | ✓ |
【全バージョン共通】3項目
① 業務名(業務分類・大分類・中分類・小分類)
業務を階層で分類します。例えば「コア業務(業務分類)」→「総務・経理(大分類)」→「請求書対応(中分類)」→「請求書の受領・ファイリング(小分類)」という形です。
小分類が実際の作業単位になります。最初から小分類だけを書き出そうとすると抜け漏れが生じるため、大分類から順に展開していくと網羅しやすくなります。
| 分類 | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| 業務分類(③のみ) | 業務の性質・位置づけを分類 | コア業務、サポート業務 |
| 大分類 | 業務の領域・機能 | 総務・経理、営業、製造、品質管理 |
| 中分類 | 業務のカテゴリ | 請求書対応、受注処理、在庫管理 |
| 小分類 | 実際の作業単位 | 請求書の受領・ファイリング、注文書のデータ入力 |
①シンプル版は「大分類+業務名(小分類)」の2列構成、②業務量計算版は大分類・中分類・小分類の3列構成、③課題分析版はさらに「業務分類」が加わった大分類・中分類・小分類・業務分類の4列構成に分かれています。
② 担当者名
担当者名を記入します。「〇〇さんしかできない」という業務が浮き彫りになり、属人化の可視化につながります。
②業務量計算版・③課題分析版では主担当と副担当を分けて記録できます。担当が1人だけに偏っている業務は、引継ぎリスクと改善優先度が高い業務として扱います。
③ 発生頻度(日次・週次・月次・年次)
業務の発生頻度をプルダウンから選択します(日次・週次・月次・四半期・年次・不定期の6択)。頻度は工数計算の基礎になるため、できるだけ実態に近い値を選んでください。
「不定期」が多い業務は実態把握が難しく改善優先度が下がりがちです。まずは定期発生の業務(日次・週次)から業務改善に着手することをお勧めします。
【②業務量計算版・③課題分析版から追加】3項目
④ 1回あたりの所要時間(分)
「1回あたり何分かかるか」を分単位で入力します。感覚値でも構いませんが、直近1〜2週間の実績に近い数字を記入してもらいましょう。
時間の入力が最も嫌がられる項目ですが、ここが曖昧では工数集計ができません。「だいたい15分くらい」というアバウトな数字でも良いので、まずは入力してもらうことを優先してください。
⑤ 月間実施回数(回)
1か月に何回その業務が発生するかを入力します。④の所要時間とこの回数から月間合計時間が自動計算されます。不定期な業務は過去3か月の平均回数を概算で入力してください。
⑥ 月間・年間工数(自動計算)
「所要時間×月間回数×担当者数」から月間総工数・年間総工数が自動計算されます。入力不要の自動計算列です。
年間工数が大きい業務 = 改善インパクトが大きい業務、という判断軸になります。この数値を時給換算すると、改善コストと削減コストの費用対効果を試算する際にそのまま使えます。
【③課題分析版のみ】4項目
⑦ 代替可否(○△✕)と属人化度スコア(1〜5)
「この業務は自分以外の人でも対応できるか?」を2軸で評価します。
代替可否(J列)は○=誰でも対応可・△=経験者なら可・×=自分にしかできない、の3段階で入力します。属人化度スコア(R列)は1〜5の数値で定量評価します(5=最も属人化が深刻)。
「×」かつ「属人化度スコアが高い」業務が属人化リスクの最優先改善対象です。
⑧ 改善余地・緊急度スコア(1〜5)
属人化度と合わせて、改善余地(S列)と緊急度(T列)を1〜5で評価します。この3つのスコアの合計が優先度スコア(3〜15点)となり、優先度ランク(A/B/C)が自動判定されます。
- Aランク(12〜15点):最優先。今すぐ改善計画を立てる
- Bランク(8〜11点):中期対応。次の四半期内に着手
- Cランク(3〜7点):現状維持でも可。余力があれば検討
スコア評価は担当者ではなく、管理職・リーダーが行うことをお勧めします。
⑨ 課題・改善アクション候補・ECRSフラグ
現状の課題(X列)に担当者が感じている問題点を記入し、改善アクション候補(Y列)に具体的な改善策を書き出します。この2列は分析のためではなく、改善ヒアリングのきっかけとして機能します。
ECRSフラグ(Z列)は、各業務に対して「排除・結合・置換・簡素化」のどの方向で改善するかを記入します。優先度Aの業務にECRSフラグをつけるだけで、次のアクションの方向性が整理されます。
💡 関連記事:ECRSとは?業務改善フレームワークの実践方法
記入例:30名・製造業の会社の記入サンプル(③課題分析版)
実際に支援した従業員30名・製造業の会社で、③課題分析版テンプレートを使用した記入例を一部ご紹介します。この会社では、受注から出荷までの業務を2週間かけて棚卸しした結果、年間で換算すると単純作業だけで約1,200時間分が存在することが分かりました。
| 大分類 | 中分類 | 業務名(小分類) | 主担当者 | 代替可否 | 頻度 | 所要時間(分) | 月間回数 | 月間総工数(人時) | 属人化度 | 改善余地 | 緊急度 | スコア | ランク | 現状の課題 | ECRS |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 受注管理 | 注文書処理 | FAXで届いた注文書のデータ入力 | 田中 | × | 日次 | 40 | 20 | 13.3 | 4 | 5 | 4 | 13 | A 最優先 | ミスが多い・FAXが見づらい | R |
| 受注管理 | 注文書処理 | 注文内容の在庫確認 | 田中 | △ | 日次 | 20 | 20 | 13.4 | 3 | 3 | 3 | 9 | B 優先 | 鈴木さんが入ったばかりで時間がかかる | S |
| 品質管理 | 検査記録 | 出荷前検査記録のExcel入力 | 山田 | × | 日次 | 30 | 20 | 10.0 | 5 | 4 | 4 | 13 | A 最優先 | 山田さんしかやり方を知らない | C |
| 総務 | 勤怠管理 | タイムカードの転記 | 佐藤 | ○ | 月次 | 120 | 1 | 2.0 | 2 | 3 | 3 | 8 | B 優先 | 手書きからの転記でミスが出る | R |
月間総工数(人時)= 所要時間(分)× 月間回数 ÷ 60 × 担当者数で自動計算。
優先度スコアは属人化度・改善余地・緊急度の合計(13点以上でAランク)。
スコアとランクはExcelが自動判定します。
このサンプルからだけでも、「受注管理の田中さん(仮名)に業務が集中している(月間26.7人時)」「出荷前検査記録は属人化度5点・代替不可で最優先の改善対象」という具体的な方向性が見えてきます。
記入のコツは「完璧を求めない」ことです。全項目を初回から正確に埋めようとすると、担当者の負荷が高すぎて途中で止まります。まず業務名と担当者名だけ全員に埋めてもらい、所要時間と課題は2週間後の補記としても構いません。
テンプレートを使った業務棚卸しの進め方(5ステップ)
テンプレートを配布して「あとは書いてください」では、業務の棚卸しは上手くいきません。中小企業診断士として中小企業の業務改善支援をおこなってきた経験から、棚卸しをきちんとやりきるための5ステップをお伝えします。

Step1:大分類から業務をリストアップする(所要:1〜2時間)
まず管理職・リーダーが「うちの会社にはどんな業務があるか」を大分類レベルで書き出します。受注・製造・出荷・総務・経理・営業…など、部門・機能単位で列挙するだけでOKです。大分類が固まったら担当者に共有し、「あなたの業務はどの大分類に入りますか?」と確認してもらいます。
⚠️ 注意:担当者に「何の業務がありますか?」と聞かない
「業務を書き出してください」と担当者だけに任せると、日常業務のうち定型的な業務しか出てこない傾向があります。まず管理職が大分類を作り、「この枠に何が入りますか?」と聞く形にするだけで、抜け漏れが大幅に減ります。
💡 コツ:「お金の流れ」を軸に大分類を整理する
業種を問わず「受注→処理・製造→出荷・納品→代金回収→管理業務(総務・経理)」という流れで業務を整理すると、網羅しやすくなります。業務の棚卸しが初めての場合は、この5段階を起点に大分類を展開してみることをお勧めします。
Step2:担当者にテンプレートを配布し、記入を依頼する(1人30分を目安に)
大分類が確定したら、各担当者に業務棚卸しテンプレートを配布します。
記入依頼時には「30分以内に書ける範囲でOK」と伝えることが重要です。業務棚卸しは担当者にとって「余計な作業」に映りやすく、「完璧に書かなければいけない」と感じると提出が遅れたり、そのまま放置されます。「所要時間を正確に測っていないと書けない」「全業務を思い出してから提出しよう」という完璧主義が、棚卸しが止まる最大の原因です。
7割の精度で全員から集まる方が、10割を目指して誰も出さない状態よりはるかに価値があります。記入依頼と同時に、以下のルールを明示しておきましょう。
- 所要時間は「だいたい何分か」でOK(正確でなくてよい)
- 業務名は「自分が普段使っている言葉」で書く
- 課題がなければ空欄でよい
⚠️ 注意:「課題を書いて」という言い方を避ける
「課題を書いてください」という表現にすると、「特に課題はありません」という回答が増え、貴重な現場の声が集まりません。「困っていること・時間がかかること・やりにくいと感じることがあれば書いてください」という問いかけに変えるだけで、記入量が大きく変わります。
💡 コツ:記入時間を業務中に設ける+記入例を配る
「空き時間にやっておいてください」では提出が遅れます。30分のミーティング時間を設け、その場でテンプレートを記入してもらうのが最も提出率が高い方法です。また、本テンプレートの「記入例シート」を印刷して一緒に配布すると、記入のハードルが大きく下がります。
Step3:工数・頻度を数字で確認・補記する(所要:30分〜1時間)
回収したテンプレートを確認し、所要時間や頻度が空白・不明になっている行をピックアップします。空白が多い担当者には個別に口頭確認して補記します。
目安として、担当者1名あたり10〜30行程度の業務が出てくるのが標準です。10行未満の場合は「まだ思い出せていない業務がある」可能性が高いため、ヒアリングで補完します。
⚠️ 注意:「30分・60分」の丸い数字に注意する
所要時間が「30分」「60分」のような丸い数字に偏っている場合、感覚値で入力されていることが多く、実態と乖離している可能性があります。特に工数が大きく出た業務(月間工数の上位3〜5件)については、「本当に毎日30分かかっていますか?」と個別確認することをお勧めします。
💡 コツ:全業務の空欄を埋めようとしない
工数の大きい業務(年間工数の上位20〜30%)さえ数字で押さえておけば、改善の優先付けには十分です。工数が小さい業務の所要時間が空白でも、分析上の影響は限定的です。初回の棚卸しは「全部完璧」より「主要業務を確実に」を優先してください。
Step4:代替可否・スコアを評価して優先度を付ける(所要:30分〜1時間)
全員分のシートが集まったら、代替可否(J列)と属人化度・改善余地・緊急度(R〜T列)を管理職・リーダーが評価します。スコアの合計で優先度ランク(A/B/C)が自動判定されます。
「代替可否×(代替不可)」かつ「属人化度スコア高」の業務が、最も優先度の高い改善候補です。
⚠️ 注意:担当者自身にスコアを付けさせない
担当者が自己評価すると「自分の業務は難しい」というバイアスが働き、属人化度や改善余地のスコアが実態より高くなりがちです。また、「改善されると自分の仕事がなくなる」という不安から低いスコアを付けるケースもあります。スコアリングは必ず管理職・リーダーが担当者の意見を聞きながら客観的に判断してください。
💡 コツ:スコアの前に「スコアリング基準シート」を全員で確認する
属人化度1〜5の判断基準が担当者と管理職でズレていると、評価の一貫性が保てません。本テンプレートの「📊 スコアリング基準」シートを使い、評価の前に「5点とは何か」を認識合わせしてから臨むと、より公平なスコアリングができます。
Step5:ECRSフレームワークで改善の方向性を決める(所要:1〜2時間)
優先度Aに絞った業務について、ECRSの視点で改善の方向性を検討します。テンプレートのZ列(ECRSフラグ)に「E/C/R/S」のいずれかを記入することで、次のアクションが具体化します。
| ECRS | 意味 | 問いかけ | 例 |
|---|---|---|---|
| E(排除) | 業務そのものをなくす | この業務はなくせないか? | 誰も読まない週次報告書をやめる |
| C(結合) | 似た業務をまとめる | 別の業務と統合できないか? | 在庫確認と発注判断を同時に行う |
| R(置換) | 手順・担当・手段を入れ替える | 別の方法や担当者に置き換えられないか? | 手入力→システム自動取り込みに変更 |
| S(簡素化) | 業務のやり方をシンプルにする | もっとシンプルにできないか? | チェック項目を10→3に絞る |
⚠️ 注意:必ずE→C→R→Sの順番で検討する
多くの現場で「まずITツールを導入しよう(S:簡素化)」から入ってしまい、本来は不要な業務を効率化するという本末転倒が起きます。「そもそもこの業務はなくせないか(E:排除)」→「別の業務と統合できないか(C:結合)」の順で問いかけ、それでも残る業務に対してR・Sを検討するのが正しい手順です。
⚠️ 注意:一度の会議で全業務のECRSを決めようとしない
優先度Aの業務だけに絞っても、初回の棚卸しで全てのECRSフラグを確定させようとすると議論が長引き、結論が出ないまま終わることがあります。初回は「明らかにE(排除)できる業務」をいくつか特定するだけでも十分な成果です。
💡 コツ:ECRSフラグは「仮説」として使う
ECRSフラグは答えではなく「改善方向の仮説」として扱ってください。会議の場で管理職と担当者が「この業務はRではないか?」と問いかけを繰り返すこと自体が、業務改善の文化を醸成します。フラグが間違っていても構いません。まず全員で考えることが目的です。
💡 関連記事:ECRSとは?業務改善フレームワークの実践方法
「棚卸しして終わり」にしないための使い方
棚卸し後に最初にやること:優先度の仕分け
棚卸しが完成したら、その日中に「改善優先度A」の業務を3〜5件に絞りましょう。全部に手をつけようとすると、何も変わりません。
優先度Aの判断基準は「年間工数×属人化リスク」です。年間300時間以上かつ担当者が1名しかいない業務は、放置リスクが最も高い業務です。
なぜ「年間300時間以上」が基準なのか?
時給換算すると、パート・アルバイト相当(時給1,500円)でも年間45万円のコストが発生します。正社員であれば残業・人件費コスト込みで年間100万円超になるケースも珍しくありません。「300時間」は、改善インパクトが経営判断に値する規模の最低ラインとして、弊社のコンサル支援でも繰り返し確認されてきた経験的な閾値です。
なぜ「担当者1名」が危険なのか?
ソフトウェア開発の世界に「バス係数(Bus Factor)」という指標があります。「その業務を理解している人が何人いるか」を表すもので、数値が小さいほどリスクが高い指標です。バス係数が1(担当者が1名のみ)の場合、その人が退職・異動・病欠した瞬間に業務が止まります。弊社が支援した中小企業では、バス係数が実質1の業務が全業務の30〜40%を占めるケースが珍しくありません。
優先すべきは「年間工数が大きく、かつ属人化リスクが高い(=バス係数が低い)業務」です。この2軸が重なる業務は、コストが最も大きく・止まるリスクも最も高い、経営上の最優先課題といえます。
改善の第一歩は「なくせる業務」を探すこと
改善というと「効率化ツールの導入」をイメージしがちですが、最もコストパフォーマンスが高い改善は「業務そのものをなくすこと」です。
私がこれまで支援してきた中小企業でほぼ例外なく見つかるのが、「誰も読んでいない報告書」「数年前に意味を失った確認作業」です。こうした業務はツールを使っても改善できません。まず棚卸し表の「課題」列を見て「そもそも本当に必要な業務か?」と問い直すことから始めましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. テンプレートの記入にどのくらい時間がかかりますか?
担当者1名あたり30分〜1時間が目安です。ただし、普段の業務を思い出しながら記入するため、初回は時間がかかることがあります。「完璧に書かなくていい」と事前に伝えることで、提出率が大幅に上がります。30分で書ける範囲を第1稿として提出してもらい、2週間後に追記という2段階方式が実務的です。
Q. 大分類・中分類・小分類・業務分類はどのように分ければいいですか?
大分類は「業務の領域・機能」(総務・経理、営業、製造など)、中分類は「業務のカテゴリ」(受注管理・在庫管理など)、小分類は「実際の作業単位」(注文書のデータ入力・在庫の確認メール送付など)と考えると分けやすいです。最初から完璧にしようとせず、まず小分類(実際の作業)をリストアップしてから後で大分類・中分類に整理するやり方でも構いません。
なお「業務分類」は③課題分析版のみに存在する列で、業務の性質や位置づけを「コア業務(なくなると事業が止まる業務)」「サポート業務(なくても事業は回るが品質に影響する業務)」のように区分するものです。
Q. 部署ごとに別々のシートを作るべきですか?
10名以上の会社で部署が複数ある場合は、部署ごとにシートを分けることをお勧めします。一枚のシートに全社分を詰め込むと、担当者が自分の行を探しにくくなり、記入ミスや抜け漏れが増えます。最終的に管理職が集計する際は、シートを統合するテンプレートを用意しておくと便利です。
Q. Googleスプレッドシートでも使えますか?
提供しているExcelテンプレートはGoogleスプレッドシートにインポートしてそのまま使えます。自動計算の数式もほぼそのまま動作します。複数人が同時に記入できるという点では、ExcelよりGoogleスプレッドシートの方が向いている場面もあります(Excelはファイルの共有方法によっては同時編集が難しい場合があります)。
Q. 棚卸し後の次のステップを教えてください
棚卸し後のステップは「①優先度Aの業務を3〜5件に絞る」「②ECRSで改善の方向性を決める」「③最優先の1業務だけ改善プロジェクトを立ち上げる」の順です。全業務を一気に改善しようとすると、何も完了しないまま終わります。まず1業務を完了させることで組織に「改善できる」という成功体験が生まれ、次の改善への推進力になります。
まとめ:テンプレートは「後で使えるデータ」を作るための道具
本記事では、業務の棚卸しテンプレートの選び方・項目の意味・記入例・5ステップの進め方を解説しました。最後に要点を整理します。
業務の棚卸しテンプレートとは、社内で行われている業務を「大分類・業務名・担当者・頻度・所要時間・課題」の軸で一覧化するためのフォーマットです。テンプレートの役割は単なる記録ではなく、改善アクションにつながるデータを作ることにあります。
中小企業で特に重要なのは、テンプレートの設計を複雑にしすぎないことです。完璧なフォーマットを用意するより、全員が30分以内に記入できる形式を選ぶことで、棚卸しを最後までやりきれるかどうかが変わります。
本記事の主要ポイントは次のとおりです。
- テンプレートは3種類から選ぶ:
シンプル版(5項目・初回向け)・業務量計算版(10項目+自動計算3列・工数可視化)・課題分析版(21項目+自動計算5列・改善計画まで)の3タイプを目的に応じて使い分ける - 版によって押さえる項目が異なる:
①シンプル版は「大分類・業務名・担当者名・頻度・メモ」の5項目、②業務量計算版はそこに所要時間・月間工数の自動計算を加えた10項目、③課題分析版はさらに代替可否・属人化度スコア・ECRSフラグ・改善優先度などを含む21項目が棚卸しの精度を決める - 5ステップで進める:
大分類の整理→配布→工数記入→フラグ仕分け→ECRSによる改善候補の絞り込みの順で動かす - 「棚卸して終わり」を防ぐ:
完成したその日に優先度A(年間300時間以上かつ担当者が少ない業務)を3〜5件に絞り、最初の1業務だけ改善プロジェクトを動かす
まずやることは、本記事で紹介したシンプル版テンプレートを使い、まず自分自身の1週間の業務を書き出してみることです。自社全体ではなく、自分の業務から始めることで記入の感覚がつかめ、社内展開のハードルが下がります。
📥 ダウンロード:業務棚卸しExcelテンプレート
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投稿者プロフィール

- ベイズマネジメント代表
- 中小企業診断士・事業承継士・属人化解消コンサルタント|マニュアル制作会社に13年勤め、300種類以上の業務マニュアルの制作、ドキュメント管理システムの開発に従事。現在は中小企業の業務効率化・属人化解消を支援するコンサルタントとして独立。マニュアル整備による教育の自動化やIT導入による生産性向上で、年間640時間の残業削減を実現した支援実績を持つ。
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