業務プロセスマップの作り方|As-IsとTo-Beで現状と理想を整理する

「自分たちの仕事の全体像を、1枚の絵で説明できますか?」——この問いに、はっきり「はい」と答えられる中小企業は多くありません。日々の業務は回っているのに、部門をまたいだ仕事の流れになると、誰がどこで何をしているのかを全員が同じように把握できていないのです。

業務改善を進めるには、まず現状を「見える化」する必要があります。ところが、いざ業務プロセスマップを描こうとすると、「どの範囲を描けばいいのか」「業務フロー図と何が違うのか」「どこまで細かく書けばいいのか」で手が止まってしまう方が少なくありません。作り方を解説する記事は多くても、大企業向けの汎用的な内容や、ツールの宣伝で終わっているものが目立ちます。

結論からお伝えすると、業務プロセスマップは「①目的と範囲を決める → ②登場人物と業務を洗い出す → ③現状(As-Is)を時系列で書き出す → ④記法を選んで作図する → ⑤現場でレビューして共有する」の5ステップで作れます。ポイントは、いきなり理想を描こうとせず、まず現状(As-Is)をありのままに描き、そのうえで理想(To-Be)へ描き替えることです。本記事では、業務フロー図との違いから、中小企業に向いた記法の選び方、As-IsからTo-Beへの具体的な設計手順、無料で使えるツールまでを、順を追って解説します。

💡 関連記事:業務の棚卸し完全ガイド|中小企業が最初にやるべき可視化の進め方

業務プロセスマップとは?業務フロー図との違い

業務改善の話を始める前に、まず「何を指す言葉なのか」をそろえておくことが大切です。プロセスマップとフローチャートは混同されがちで、言葉の定義があいまいなまま作図に入ると、粒度がバラバラの使えない図になってしまいます。

業務プロセスマップとは、ある業務が始まってから終わるまでの一連の流れを、担当者・作業・順序を含めて1枚に図示したものです。特定の作業だけでなく、部門や担当をまたいだ業務全体の流れを俯瞰できる点に特徴があります。

よく似た言葉に「業務フロー図(フローチャート)」がありますが、両者は目的とカバー範囲が異なります。ざっくり言えば、業務フロー図は「1つの作業の手順」を細かく描くもの、業務プロセスマップは「複数の作業や部門をまたいだ業務の全体像」を描くものです。両者の違いを整理すると、次のようになります。

観点業務プロセスマップ業務フロー図(フローチャート)
描く範囲部門・担当をまたいだ業務全体1つの作業・手順の中身
目的全体像の把握・課題の発見手順の明確化・標準化
粒度やや粗め(工程レベル)細かめ(操作レベル)
主な読み手経営層・改善推進者現場の担当者
使う場面業務改善の入口・現状把握マニュアル化・引き継ぎ

どちらが優れているという話ではなく、目的によって使い分けます。中小企業の場合は、まず業務プロセスマップで全体像をつかみ、改善すべき工程が見えてから、その部分を業務フロー図で詳細化する流れが効率的です。作業単位の描き方については、次の記事で詳しく解説しています。

💡 関連記事:業務フロー図の作り方完全ガイド|ゼロから始めるフローチャート作成法

言葉の定義がそろったところで、次に「なぜ中小企業こそプロセスマップを描くべきなのか」を整理します。

なぜ中小企業に業務プロセスマップが必要なのか【3つの理由】

ツールや手法を学ぶ前に、「そもそも何のために描くのか」を押さえておくと、途中で目的を見失わずに済みます。プロセスマップは作ること自体が目的ではなく、業務改善という次の一手につなげるための土台です。

中小企業がプロセスマップを描くべき理由は、主に次の3つです。

  1. 業務の属人化を可視化できる:「この仕事はあの人しか分からない」という状態は、図にすると一目で分かります。特定の担当に処理が集中している箇所や、その人が休むと止まる工程が、線の集まり方として現れます。
  2. 部門間の“わたり”のムダが見つかる:中小企業の非効率は、1つの部署の中ではなく、部署と部署の“あいだ”に潜んでいることが多いです。「営業が受けた注文を、紙で製造に渡し、製造が手入力で在庫システムに打ち直す」といった二重入力や手戻りは、全体を描いて初めて見えてきます。
  3. 改善の優先順位を決められる:どこにムダや停滞があるかが分かれば、限られた人手と時間をどこに投じるかを判断できます。中小企業では「全部いっぺんに変える」ことはできないため、この優先順位づけが特に重要です。

私が支援の現場で業務プロセスマップを描いてもらうと、9割近くの会社で「部門をまたいだ二重入力」か「特定の人に処理が集中している工程」のどちらかが浮かび上がります。経営者本人が気づいていなかった課題が、1枚の図で共有されるのです。

業務プロセスマップは、業務改善フレームワークV.A.S.E.(Visualization=見える化、Standardization=標準化、Efficiency Improvement=効率化、Automation=自動化)でいえば、最初の「見える化」にあたります。ここが正確でないと、その後の標準化も効率化も的外れになってしまいます。なお、業務の洗い出し自体の進め方は、業務の棚卸しの記事で基礎から解説しています。

💡 関連記事:業務の棚卸しとは?意味・目的・基本をわかりやすく解説

目的が定まったところで、実際にどの「記法」で描くかを選んでいきましょう。

業務プロセスマップの記法3種類と中小企業の選び方

作図に入る前に、どの表現方法(記法)を使うかを決めておく必要があります。記法を選ばずに描き始めると、途中で書き方が変わってしまい、読み手が混乱する図になりがちです。難しく考える必要はなく、中小企業が実務で使う記法は、次の3種類を知っておけば十分です。

代表的な3つの記法を、中小企業での使いやすさとあわせて比較します。

記法特徴向いている場面中小企業での使いやすさ
フローチャート開始・処理・分岐・終了を記号でつなぐ最も基本的な記法1つの流れをシンプルに描きたいとき◎ 誰でもすぐ描ける
スイムレーン担当者・部門ごとに横(縦)のレーンを分けて流れを描く部門をまたぐ業務の全体像を描くとき◎ プロセスマップに最適
BPMN業務プロセスを表す国際標準の詳細な記法厳密な仕様化・システム設計に落とすとき△ 記号が多く学習コスト高

中小企業が業務プロセスマップを描くなら、まずスイムレーンをおすすめします。担当者や部門ごとにレーン(泳ぐコースのような帯)を分けて業務を並べるので、「誰が」「どの順番で」仕事をしているかが一目で分かり、部門間の“わたり”の課題を見つけやすいためです。

BPMNは国際標準として厳密ですが、記号のルールが多く、慣れていない現場ではかえって作図が進みません。システム開発の要件定義まで踏み込む段階になってから検討すれば十分です。最初の1枚は、四角と矢印、そして担当ごとのレーンだけで描けるスイムレーンで始めましょう。

記法が決まれば、いよいよ作図です。次のセクションで、現状(As-Is)を描く5ステップを具体的に見ていきます。

業務プロセスマップの作り方【5ステップ】

ここからが本題です。プロセスマップづくりでつまずく最大の原因は、手順を踏まずにいきなり清書しようとすることにあります。次の5ステップを順番に進めれば、迷わず現状のマップを完成させられます。まずは理想ではなく「今、実際にどう動いているか(As-Is)」を描くことがポイントです。

この5ステップにそのまま対応したExcelシート(各ステップのテンプレートと記入例のセット)を無料でご用意しました。以下では、そのシートに実際どう書き込んでいくのかを、従業員40名の製造業が「受注から出荷まで」を可視化するケースを例に、ステップごとに見ていきます。

📥 ダウンロード:業務プロセスマップ作成シート(Excel無料DL)

ステップ1:目的と範囲(スコープ)を決める

最初に「何のために、どこからどこまでを描くのか」を1文で決めます。ここが広すぎると永遠に完成せず、狭すぎると課題が見えません。たとえば「受注から出荷までの流れを可視化し、二重入力をなくす」のように、対象業務と目的をセットで言葉にします。

シートには次のように書き込みます。

項目記入例
対象業務名受注〜出荷プロセス
目的(1文で)受注から出荷までの流れを可視化し、部門間の二重入力をなくす
開始点(トリガー)顧客から注文書が届く
終了点(ゴール)顧客が商品を受け取る
対象の部門・担当営業担当/営業事務/製造部/購買/出荷担当
対象外とするもの請求・入金消込(別プロセスとして後日実施)

見落とされがちなのが最後の「対象外とするもの」です。ここを先に書いておかないと、話し合いの途中で「請求処理はどうする?」と範囲がずるずる広がり、いつまでも完成しません。

中小企業の場合、いきなり全社を描こうとすると挫折しがちです。最初は「受注処理」「請求業務」など、困りごとが多い1つの業務プロセスに絞ることをおすすめします。

ステップ2:登場人物と業務を洗い出す

対象範囲の中で、「誰が」「どんな作業をしているか」をすべて書き出します。付箋やスプレッドシートに、担当者(部門)と作業をひたすら列挙していく作業です。この洗い出しが業務の棚卸しにあたり、ここが漏れると後のマップも不正確になります。

書き出すときは、担当・作業・時間をセットで記録します。

担当作業名使うツール・帳票1回の所要時間月間件数気になる点
営業担当注文書を受領して内容を確認する注文書5分80件確認漏れが月1〜2件発生
営業担当受注票を手書きで作成する受注票(紙)5分80件⚠ 紙で作る必要があるか要検討
営業事務受注票を販売管理システムに入力する販売管理システム8分80件⚠ 手書き票からの転記
営業事務受注一覧をExcelに転記して製造へメールするExcel・メール6分80件⚠ システムから手で転記

作業名は「動詞+目的語」で書くのがコツです。「受注処理」とだけ書くと人によって指す範囲が変わりますが、「受注票をシステムに入力する」なら誰が読んでも同じ意味に取れます。

所要時間と月間件数まで記録しておくと、後のステップで改善効果を「月◯時間の削減」と数字で示せるようになります。この記入例では、洗い出した12作業の合計が月69時間ぶんの工数という結果になりました。

このとき、担当者本人にヒアリングすることが欠かせません。管理者が思っている手順と、現場が実際にやっている手順は、しばしば食い違います。私の経験では、この“思い込みとのズレ”こそが改善のヒントになることが多いです。

ステップ3:現状(As-Is)の流れを時系列で書き出す

洗い出した作業を、実際に起きている順番に並べます。「注文が入る→営業が受注票を書く→製造に渡す→…」というように、時系列でつなげていきます。分岐(「在庫があれば出荷、なければ発注」など)もこの段階で拾っておきましょう。

実際に並べてみると、次のようになります(一部を抜粋)。

順番担当作業内容次に渡すもの⚠ 課題・気づき
営業担当受注票を手書きで作成する受注票(紙)紙の受注票が後工程の転記元になっている
営業事務受注票を販売管理システムに入力する受注データ二重入力① 紙からシステムへ手入力
営業事務受注一覧をExcelに転記して製造へメールする受注一覧Excel二重入力② システムから手で転記
製造部Excelを見て製造指示書を手入力する製造指示書二重入力③ 転記ミスが月2件程度発生

「次に渡すもの」の列を1つ足すだけで、同じ受注情報が紙 → システム → Excel → 製造指示書と4回も書き写されている事実が浮かび上がります。順番に並べる前は、それぞれの担当者が自分の持ち場の仕事として個別にこなしていたため、誰も問題だと気づいていませんでした。工程を分断して見ているうちは、この手のムダは発見できません。

ここでの鉄則は、理想化しないことです。「本来こうあるべき」ではなく、「実際にはこう回っている」をありのままに描きます。手戻りや二重入力といった“きれいでない部分”こそ、改善の宝の山だからです。

ステップ4:記法を選んで作図する

前のセクションで選んだ記法(中小企業ならスイムレーン推奨)で、時系列に並べた流れを清書します。担当者ごとにレーンを分け、作業を四角、判断を分岐で表します。日本の業務では、担当を横に並べて時間を上から下へ流す縦方向の書き方が読みやすく、印刷して配るときにも扱いやすいです。

実際に配置すると、次のような形になります(営業担当〜製造部の3レーンを抜粋)。

順番営業担当営業事務製造部
注文書を受領し内容を確認する
⚠ 受注票を手書きで作成する
⚠ 受注票をシステムに入力する
⚠ 受注一覧をExcelに転記しメールする
⚠ Excelを見て製造指示書を手入力する
在庫を確認する ◆あり/なし

縦に読めば時間の流れ、横に見れば担当が分かります。③から⑥にかけて作業が営業担当 → 営業事務 → 製造部と階段状に下りていき、部門をまたぐたびに同じ情報が書き写されていることが、一目で伝わります。時系列表では文字を追う必要があった課題が、図にした瞬間に「形」として見えるようになるのです。

粒度に迷ったら、「1つの箱=1人が一気にやり切れる作業のかたまり」を目安にします。細かすぎると完成せず、粗すぎると課題が見えないため、この中間を狙います。

ステップ5:現場でレビューして完成・共有する

描いたマップは、必ず現場の担当者に見てもらい、「実際の流れと合っているか」を確認します。作成者ひとりの理解で描いた図は、たいてい現実とズレています。複数人で見ることで抜け漏れが見つかり、同時に「この図が全員の共通言語になる」という効果も生まれます。

レビューでは、次のような観点で1項目ずつ確認していきます。記入例では、11項目のうち3項目に指摘が出ました。

確認の観点チェック内容判定修正メモ
流れの正しさ抜けている工程はないか(特に例外処理・差し戻し)返品・再出荷の流れが抜けていた。⑫の後に追記する
表現作業名が「動詞+目的語」で書かれ、同じ意味に取れるか「受注処理をする」が曖昧。「受注票をシステムに入力する」に修正
運用更新のきっかけと担当を決めたか×未定。次回の定例で更新担当と見直し時期を決める

特に見落とされやすいのが、最後の「更新のきっかけと担当」です。ここを決めないまま運用を始めると、半年後には現実と合わない図になってしまいます。全項目が○になってから、マップを確定させましょう。

完成したマップは、いつでも見られる場所(共有フォルダやオンラインボード)に置き、更新のたびに差し替えられる状態にしておきます。ここまでで現状(As-Is)マップは完成です。

作り方の全体像はつかめましたが、プロセスマップの真価は「描いたあと」にあります。次に、As-Isを理想(To-Be)へ描き替える手順を解説します。

As-IsからTo-Beへ|理想のプロセスを設計する4つの視点

多くの解説記事は「現状を描いて終わり」で止まっていますが、それでは業務は1つも改善されません。プロセスマップの本当の目的は、現状(As-Is)と理想(To-Be)を並べて比べ、そのギャップを埋めていくことにあります。

As-Isマップができたら、それを土台にTo-Be(あるべき姿)を描きます。理想を考えるときに使えるのが、業務改善の定番フレームワークECRSの4つの視点です。ECRSは、次の4つの頭文字をとったものです。

  1. 排除(Eliminate):そもそもこの作業は必要か? なくせないか。二重チェックや使われない報告書など、目的を失った作業を止める視点です。
  2. 結合(Combine):別々にやっている作業を1つにまとめられないか。複数の担当が同じデータを入力しているなら、1回の入力に集約できないかを考えます。
  3. 入れ替え(Rearrange):順番や担当を入れ替えると流れがよくならないか。承認の順番を変える、前工程に判断を移すといった見直しです。
  4. 簡素化(Simplify):作業そのものを簡単にできないか。テンプレート化・自動化・入力項目の削減などで、1つひとつの負荷を下げます。

As-Isマップの各工程に対してこの4つを順番に問いかけていくと、「なくせる作業」「まとめられる作業」が具体的に見えてきます。先ほどの記入例に当てはめると、次のように整理できます。

As-Isの工程現状の問題ECRS区分改善後の姿(To-Be)削減時間
③ 受注票を手書きで作成する紙が後工程の転記元になっているE 排除手書きを廃止し、注文書から直接システムへ入力する5分/件
④ 受注票をシステムに入力する紙からの二重入力①C 結合②の確認時に営業担当が入力し、事務の再入力をなくす8分/件
⑤ 受注一覧をExcelに転記しメールするシステムからの二重入力②E 排除製造部がシステムの受注一覧を直接参照する6分/件
⑥ Excelを見て製造指示書を手入力する二重入力③ 転記ミスが月2件S 簡素化システムから製造指示書を出力して使う7分/件
⑦ 在庫を確認する製造直前で在庫切れの判明が遅いR 入れ替え受注入力の直後に在庫を自動判定する3分/件
⑪ 出荷実績をシステムに入力する出荷担当の作業を事務が代行しているR 入れ替え出荷担当がハンディ端末でその場で登録する4分/件

この6工程だけで1件あたり33分、月80件なら月44時間ほどの削減という試算になります(削減時間は記入例として置いた仮の数値です。自社の実測値に置き換えてお使いください)。工程数は12から7へ、二重入力は3か所からゼロになりました。

そのうえで、改善後の流れをTo-Beマップとして描き直します。

ここで大切なのは、As-IsとTo-Beを並べて見せることです。「今こうなっているものを、こう変える」という対比があると、現場も経営者も納得しやすく、改善の合意形成が一気に進みます。私が支援した従業員40名ほどの製造業では、受注から出荷までのAs-Isマップに二重入力が3か所見つかり、ECRSの「結合」と「簡素化」でそれらを1回の入力に集約した結果、月あたりの処理時間を大きく削減できました。

ECRSの具体的な使い方は、次の記事で詳しく解説しています。

💡 関連記事:ECRSとは?業務改善で使えるフレームワークの実践方法

理想の姿が描けたら、それを実際の業務改善の計画へ落とし込みます。改善プロジェクト全体の進め方は、こちらのガイドが参考になります。

💡 関連記事:中小企業の業務改善の進め方|コンサルが教える実践5ステップ

ここまでで作り方の本筋は押さえられました。次に、実際に手を動かす前に知っておきたい「よくある失敗」を共有します。

業務プロセスマップでよくある失敗3つと回避のコツ

手順どおりに進めても、いくつかの落とし穴にはまると、せっかくのマップが使われないまま放置されてしまいます。あらかじめ失敗のパターンを知っておくと、遠回りを避けられます。現場で特に多い失敗は、次の3つです。

失敗1:粒度が細かすぎて完成しない
「正確に描かなければ」と気負うあまり、1つの作業を何十もの操作に分解してしまい、途中で力尽きるパターンです。回避のコツは、最初は粗くていいと割り切ること。全体が1枚に収まる粒度で描き、細部が必要な工程だけ後から業務フロー図に落とし込みます。

失敗2:作って終わりで更新されない
完成した瞬間に満足してしまい、その後の業務変更が反映されず、半年後には現実と合わない“化石”になるパターンです。回避のコツは、更新のタイミングと担当をあらかじめ決めておくこと。「担当交代時」「システム変更時」など、見直すきっかけをルール化します。

失敗3:現場を巻き込まずに描く
管理者や改善担当がひとりで描き上げ、現場に「これが正しい流れです」と押し付けてしまうパターンです。実際の流れとズレているうえ、現場の納得も得られません。回避のコツは、ステップ2の洗い出しとステップ5のレビューに、必ず現場担当を参加させることです。

これらはいずれも、「完璧を目指さず、現場と一緒に育てる」という姿勢で避けられます。最後に、作図を助けてくれる無料ツールを紹介します。

業務プロセスマップの作成に使える無料ツール3つ

紙とペンでも描けますが、修正・共有のしやすさを考えると、デジタルツールを使うほうが継続しやすくなります。ここでは、無料プランがあり中小企業でも導入しやすい3つのツールを紹介します。それぞれ特徴が異なるため、自社の使い方に合わせて選びましょう。

ツール特徴料金帯向いている規模・使い方
draw.io(diagrams.net)ブラウザで使える無料の作図ツール。登録不要で使え、スイムレーンやフローチャートのテンプレートが豊富完全無料まず費用をかけず1人で描き始めたい小規模企業
Miroオンラインの共同編集ボード。付箋を貼る感覚で複数人が同時に書き込める無料プランあり(作成できるボード数などに制限)現場を集めてワークショップ形式で描きたいチーム
Lucidchart作図に特化したクラウドツール。テンプレートと図形が充実し、きれいな清書がしやすい無料プランあり(作成できる図の数などに制限)清書して社内外に共有する機会が多い企業

料金・プラン内容は2026年7月時点の情報です。各ツールの最新の提供条件は公式サイトでご確認ください。

最初の1枚を1人で描き始めるなら、登録不要ですぐ使えるdraw.io(diagrams.net)が手軽です。複数人で現場を巻き込みながら描きたい場合は、同時編集に強いMiroが向いています。まずは無料の範囲で試し、運用が定着してから有料プランや上位ツールを検討すれば十分です。

各ツールの機能・料金・使い勝手をさらに詳しく比較したい方は、作図ツールを専用に取り上げた次の記事もあわせてご覧ください。

💡 関連記事:業務フロー作成ツール比較【無料で使える3選】

なお、ツールはあくまで作図を助ける道具にすぎません。大切なのは、これまで解説してきた「現状をありのままに描き、理想へ描き替える」という考え方のほうです。

より広い視点で自社の業務を分析する手順については、次の記事もあわせてご覧ください。

💡 関連記事:業務分析のやり方|中小企業が現状把握で使うフレームワーク(公開予定)

よくある質問(FAQ)

Q. 業務プロセスマップと業務フロー図は、どちらを先に作るべきですか?

まず業務プロセスマップから作ることをおすすめします。プロセスマップで部門をまたいだ業務の全体像をつかみ、改善すべき工程が見えてから、その部分を業務フロー図で詳細化する流れが効率的だからです。全体を見ずにいきなり細かいフロー図を描くと、木を見て森を見ずの状態になりやすくなります。

Q. 作成にはどれくらいの時間がかかりますか?

対象範囲の広さによりますが、1つの業務プロセス(例:受注処理)であれば、洗い出しからレビューまで数時間〜1日程度が目安です。ただし、いきなり完璧を目指す必要はありません。まず粗い下書きを1〜2時間で描き、現場のレビューを経て精度を上げていく進め方のほうが、結果的に早く実用的なマップが完成します。

Q. ITツールがなくても作れますか?

作れます。ホワイトボードや模造紙に付箋を貼っていく方法は、現場を巻き込みやすく、下書き段階ではむしろ効果的です。ある程度固まった段階で、修正・共有のしやすいデジタルツール(draw.ioなど)に清書すると、その後の更新が楽になります。

Q. どこまで細かく描けばいいのか分かりません。

「1つの箱=1人が一気にやり切れる作業のかたまり」を目安にしてください。1つの作業を操作レベルまで分解すると完成しません。逆に粗すぎると課題が見えないため、全体が1枚に収まる粒度を保ちつつ、詳しく見たい工程だけ後から業務フロー図に落とし込むのがコツです。

Q. せっかく作っても使われなくなりそうで不安です。

更新のきっかけと担当をあらかじめ決めておくことで防げます。「担当が交代したとき」「システムを入れ替えたとき」など、見直すタイミングをルール化し、いつでも差し替えられる場所に保管しておきましょう。作って終わりにせず、業務が変わるたびに育てていくものと捉えることが、形骸化を防ぐ最大のコツです。

まとめ:現状を描いてから、理想へ描き替える

本記事では、業務プロセスマップの作り方について、業務フロー図との違いから、記法の選び方、As-IsからTo-Beへの設計、無料ツールまでを解説しました。最後に要点を整理します。

業務プロセスマップとは、業務が始まってから終わるまでの流れを、担当者・作業・順序を含めて1枚に図示したものです。

中小企業で特に重要な理由は、非効率が部門と部門の“あいだ”に潜んでいるからです。全体を1枚に描くことで、属人化・二重入力・手戻りといった課題が見え、限られた人手をどこに投じるかを判断できるようになります。

作成の要点は次のとおりです。

  1. 5ステップで作る:目的と範囲の決定 → 洗い出し → 現状(As-Is)の描画 → 作図 → レビューの順に進める
  2. 中小企業はスイムレーンから:担当ごとにレーンを分け、部門間の流れを見えるようにする
  3. As-IsをTo-Beへ描き替える:ECRS(排除・結合・入れ替え・簡素化)の4視点でギャップを埋める

まずやることは、困りごとが多い業務を1つだけ選び、その「登場人物」と「作業」を紙に書き出してみることです。全社をいっぺんに描く必要はありません。1つの業務プロセスをありのままに描くところから、あなたの会社の業務改善は動き始めます。

本記事で使った5ステップのシートは、テンプレートと記入例をセットにして無料で配布しています。本記事の記入例がそのまま入っているので、書き方に迷ったら記入例シートを見ながら進められます。

📥 ダウンロード:業務プロセスマップ作成シート(Excel無料DL)

自社の課題に応じた具体的なアドバイスが欲しい方は、60分の簡易業務診断(無料相談)をお気軽にご利用ください。

投稿者プロフィール

小西 貴大
小西 貴大ベイズマネジメント代表
中小企業診断士・事業承継士・属人化解消コンサルタント|マニュアル制作会社に13年勤め、300種類以上の業務マニュアルの制作、ドキュメント管理システムの開発に従事。現在は中小企業の業務効率化・属人化解消を支援するコンサルタントとして独立。マニュアル整備による教育の自動化やIT導入による生産性向上で、年間640時間の残業削減を実現した支援実績を持つ。